頭を何かで殴られたかのような衝撃でした。
もちろん、実際に危ない目にあったわけではありません。
ピアノを習ったことのある人なら多分、ご存じでしょう。
『ブルグミュラー:25の練習曲 Op.100』
その中の第14番、"La Styrienne" という曲は、私が習った小さい頃の楽譜に「スティリアの女」という日本語訳タイトルが付けられていました。
スティリアというヨーロッパのどこかの地方の女性の曲だと思いこんでいました。
しかも、「スティリア」という響きでラテン系(イタリー、フランス、スペインあたり)だと勝手に思っていました。
スティリアという読み方自体がフランス語だから仕方ありません。
ところが、昨日、たまたま全音楽譜出版の新版を見たところ、
「シュタイヤー舞曲」
と、タイトルがまったく変わっているではありませんか!
ガーン!!
しかも、オーストリアのシュタイヤー(Steyr)地方の舞曲だという解説まで付いて…。
ドイツ語で、Steirisch(シュタイリッシュ)になるそうです。
テンポ指定に、mouvement de valse(ムヴマン・ドゥ・ヴァルス)、つまり「ワルツのテンポで」とあるので、舞曲なのでしょう。
しかし、「スティリアの女」と「シュタイヤー舞曲」だと、随分イメージが変わってしまいます。
ずっと、スティリアに住む魅力的な女性の踊りだと思って弾いていたのに…。
アルペン・ワルツだったとは!
なぜ、こんなことに?
ダンナちゃまが言うには、「フランス語で舞曲は、昔はla danse a la 〜(例:la danse a la styrienne)で表していて、"danse a la" が抜け落ちていったからやろうなぁ。」とのことでした。
*文字化けしますのでアクサンは付けていませんが、もちろん a にアクサン・グラーヴが付きます。
danseは、la danseという女性名詞ですので、形容詞がstyrienなら男性形ですが、名詞の性の一致を受けてstyrienneという女性形になったわけです。
確かにポロネーズ(Polonaise)なども女性形です。
きっと、la danse a la polonaise だったのでしょう。
でも、これは「ポーランドの女」とは訳さず、そのまま「ポロネーズ」か、「ポーランド(風)舞曲」です。
あらためて「シュタイヤー舞曲」を弾いてみると、ラテンなノリというより、どこかレントラー(田舎の踊り)風の土の香りさえ漂ってくるような…。
ちなみにシュタイヤーという街は、中世のゴシック建築が多く残る素敵な所で、クリスマス郵便局が有名だとうことがシュタイヤーのホームページでわかりました。
正しい訳というのは、当たり前ですが、本当に大事ですね。
ちなみにブルグミュラー25の練習曲はどれも好きですが、その中でも私のお気に入りは、アラベスク、さようなら、タランテラ、舟歌、貴婦人の乗馬、といった『ザ・ロマン派』な曲目です(^-^)
25曲を全部通して弾いても30分弱で終わってしまうのですが、一曲ずつに物語があって練習曲とは言え、興味深い曲集です。