イーヴォ・ポゴレリッチ ピアノ・リサイタル@大阪・ザ・シンフォニーホール
プログラムは以下の通り。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番ハ短調 op.111
★ベートーヴェン:エリーゼのために WoO.59
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第24番嬰ヘ長調 op.78
★グラナドス:スペイン舞曲集 op.37から
第5番「アンダルーサ」
第10番「悲しき舞曲」
第12番「アラベスカ」
リスト:超絶技巧練習曲集 S.139から
第5番 変ロ長調「鬼火」
第8番 ハ短調「狩」
第10番 ヘ短調
バラキレフ:イスラメイ(東洋風幻想曲)
★印は、曲目変更後の実際の演目です。
当初は、「エリーゼのために」は予定に無く、また後半はスクリャービンのソナタを弾く替わりにグラナドスになったのでした。
この日、6時開場、7時開演予定だったのですが、私たちがザ・シンフォニーホールに到着した6時40分過ぎでもまだポゴレリッチはゲネプロ(リハーサル)をやっていて、ロビーは待たされている観客でいっぱいでした。
当然、7時を過ぎての開演となりました。
舞台はほとんど客席と変わらないぐらいに真っ暗で、ピアノのところだけぼんやりと照明が点いている状態でした。
電気のない時代のろうそくの灯りで演奏会をしていた雰囲気を醸し出そうとしているかのようでした。
登場したポゴレリッチは、若いときと違ってスキンヘッドで、私たちは前から8列目に座っていたのですが、照明が暗いのでその表情もはっきりとわかりませんでした。
でも、なんとなくにこやかに見えました。
最近、彼はリサイタルのときには譜めくリストまで付けて、全曲楽譜を見て演奏するのですが、今夜もそうでした。
しかし、あれだけ照明が暗いと、楽譜を見ているというより置いているだけに近い感じでしょうか。
プログラムはすべて彼の得意なレパートリーですから、暗譜は出来ているはずですので、「曲をデフォルメしているわけではない、という主張か」という議論がニューヨーク公演ではなされたようです。
今晩の演奏は、楽譜を見ていても見ていなくても関係のない、彼らしい素晴らしい演奏という感じでした。
彼のように親指と中指でオクターブが届くような巨人は、後半にリストの超絶技巧練習曲集や、難曲のイスラメイを弾いても屁のカッパでした。
身体が小さいと、演奏するときに腕ごと身体も右に左にと移動しなければいけませんが、彼は大きいのでどの曲も胴体が左右に移動する必要がなく、終始余裕のある演奏でした。
ソロ・リサイタルで、弾き終わっても弾き初めとまったく変わりなく演奏を終えたピアニストを私は初めて見ました。
ましてや、最後の演目が難曲のイスラメイですから、尚更です。
日本人の音大卒の女の子がこの曲を弾いているのを何度か聴きましたが、どの子もヒィヒィ、ハァハァ、汗タラタラで鼻の穴を膨らませて必死でピアノと格闘した挙げ句、討ち死にしてました。
また、ポゴレリッチの演奏は強弱の差がかなり極端に演奏されていたので、この演奏法については色々意見が分かれるところだと思います。
強音はとことん強烈な衝撃があり、弱音は弱音ペダルを駆使して徹底的に弱くしていたので、「キレイなピアノの演奏」ではありませんでした。
私はオーケストラ的で、シンフォニックな響きをピアノという楽器を通して立体的に表現していたと感じました。
やはり「音楽」ならば、こうでなくちゃ!と思いました。
ピアノという楽器のピアニズムにこだわる人は、この演奏法を否定するだろうなぁ、とも思いました。
特に日本人のピアノの先生の中にはいまだに「弱音ペダルはラヴェル以外では使ってはいけない」と主張する人が多いので、この演奏を聴いたら憤慨のあまりに卒倒するだろうなぁ…。
私の個人的な意見ですが、まだまだピアノを「弾く」より「叩く」人が多く、またピアノに強音を求めて響きを考えない人が多いと思うのですがいかがでしょうか。
大きい音がダイナミックな演奏を作ると勘違いしている人が多いです。
ピアノのハーモニーの中の弱音にももっと響きと繊細さをもたせると、表現の可能性はかなり広がると思います。
終演後、ホール内で偶然、知人の世界的実力派有名ヴァイオリニストに会いました。
「あれ!?」
「わぁ!久しぶり!来てたんや!」
「着物で来てる人がいるなぁ、と思ってたんやけど…!」
そう、私は今年の目標である「週イチ着物」だったのでした。
今月の29日に初釜があるので、それまでには何とか完璧に二重太鼓をマスターしたい一心で今日も13日の文楽に引き続き、訪問着に袋帯で頑張ってみました。
しかし、さすがに歌舞伎や文楽と違ってピアノ・リサイタルだと着物の観客は少なかったです。
ホールを出た後、あまりにも暗い照明に疲れたダンナちゃまと私は福島駅前のバラデーロというスペイン料理のお店に寄りました。
夕食は演奏会前に福島駅とザ・シンフォニーホールノ中間ぐらいにある手打ち蕎麦「やまが」というところで食べていたので、ダンナちゃまは軽くヒューガルテンというベルギービールを飲み、私はトロピカル・ジェラートの盛り合わせを注文しました。
わざわざスプーンもジェラートとは別のグラスに盛られて来ました。
フルーツとジェラートの盛りつけも素敵で、美味しかったです(^-^)
店内もインテリアに凝っていて、1階から3階まであるのですが、私たちは吹き抜けの1階部分に座っていたので、とても広々とした感覚でした。
こちらは、バラデーロの玄関前です。
おや、玄関から出てくるのはダンナちゃま!!